黒帯シネマ道場『リーサル・ウェポン』
お世話になっていた月刊誌『DVD&ブルーレイVISION』が、3月発売の4月号で休刊になりました。
僕のライター仕事は基本的に名前が出ない無署名のものが大半なんですが、『DVD&ブルーレイVISION』ではコラムも連載させていただいてました。
僕がアクションチーム(倉田プロ出身で、谷垣健治さんや下村勇二さんの先輩で、ドニー・イェンの作品などに参加してる田中清一さんが主催している“パスガード”というチームにお世話になってます)で格闘技の練習をやっているということもあって、格闘技要素のあるアクション映画を紹介するというコラム連載を持たせてもらっていたんです。
コラムのタイトルは、「黒帯シネマ道場」。
編集長にブログへの転載の許可をずっと以前にもらっていたので、何本か掲載しようと思いつつ雑事にかまけてダラダラしていたら、同誌が休刊ということになってしまいました。
同誌にはものすごくお世話になっていたので、休刊は本当に残念です。
というようなわけで、『ブルーレイ&DVD VISION』に掲載した「黒帯シネマ道場」の原稿を(多少の加筆修正を加えつつ)これから何本か転載していきたいと思います。
まずは2012年8月号に掲載された第1回の原稿を。
1987年/アメリカ
監督:リチャード・ドナー 脚本:シェーン・ブラック、出演:メル・ギブソン、ダニー・グローヴァー
ある売春婦が自殺する。女はベテラン刑事マータフの軍人時代の戦友の娘だった。マータフは自殺願望のある特殊部隊あがりのリッグスと組んで捜査にあたり、背後に潜む闇に気付く……。第4弾まで作られた人気シリーズ。
強くなりたい! けど、つらい練習は勘弁ッス、という僕とあなたのための『黒帯シネマ道場』! 映画を見ながら格闘技のことを研究すれば、映画を見るだけで強くなれる!! ……はずです、たぶん。
記念すべき第1回で取り上げるのはメル・ギブソン主演の刑事アクション『リーサル・ウェポン』。
今の総合格闘技を語る上でブラジリアン柔術の存在は外せません。そのブラジリアン柔術の代表的流派であるグレイシー柔術が注目を集めたのは、1993年に開かれた格闘技大会、第1回UFCでのこと。
ここで我々格闘技ファンはグレイシー柔術を初めて知り驚愕したわけですが、実はUFCより先にグレイシー柔術を世に知らしめた映画があるのです。そう、それが『リーサル・ウェポン』!
初期UFCのプロデューサーだったホリオン・グレイシーがスペシャルテクニカルアドバイザーとして本作に参加。
メルギブ演じるリッグス刑事は最後の肉弾戦でグレイシー柔術の技術を使います。
取っ組み合いで相手の上になった状態から関節技の腕十字を狙い、それをかわした相手を下からの三角絞めで倒す……今なら見慣れた展開ですが、当時は全く知らない動きだったので非常に新鮮でした。
ちなみに本作にはホリオン以外に、カポエイラと〝ジェイルハウスロック〟の指導者も参加。
逆立ちキックはないんですが、メルギブが見せる大きな内回し蹴りはカポエイラの技術だと思います。ジェイルハウスロック(日本語に訳すと“監獄ロック”ですね)は『リーサル・ウェポン』のノベライズ版の説明によると囚人が狭い場所で戦うときに使う格闘術だそうで、主人公がコサックダンスみたいな蹴りで敵を倒すという描写がありました。
英語版ウィキペディアの解説を見ると、ジェイルハウスロックのスタイルは地域によって様々で、起源にも諸説あるようです。知られざる米国刑務所の格闘技……気になりますねぇ。
それはさておき、『リーサル・ウェポン』は『2』以降では『3』でレネ・ルッソ演じる女刑事が立った状態での脇固めをかけるシーン(技を受けるのはホリオンその人!)があるものの、メルギブ自身は関節技を使わなくなり、殴って蹴るだけになりました。時代が早過ぎたんですかねぇ。格闘技的には普通になってしまい、ちょっと残念でした。
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