黒帯シネマ道場『ミリオンダラー・ベイビー』
月刊誌『DVD&ブルーレイVISION』で、僕が連載していた格闘アクション映画を紹介するコラム「黒帯シネマ道場」。編集部のご厚意で原稿を転載させていただきます。
今回、掲載するのは、2013年5月号の記事。『ミリオン・ダラー・ベイビー』を取り上げました。
ここで紹介したルシア・ライカのことは格闘家時代から好きだったので、女優としてももっともっと活躍してほしいです。
2004年/アメリカ
監督・出演:クリント・イーストウッド 出演:ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン、ルシア・ライカ
小さなボクシングジムを営むフランキーを、女子選手マギーが訪れる。「女子は指導しない」と拒むフランキーだったが、マギーは必死に練習を重ね……。
男とも戦った最強女子選手が女優に!
映画を見ただけで強くなれる(と信じたい)黒帯シネマ道場! 少し古い話ですが、南海キャンディーズしずちゃんの挑戦を見て、女子ボクシングの存在を知った方もいるのでは?
アメリカでは、あのモハメド・アリの娘レイラ・アリがボクサーとして高い人気を誇ってましたが、玄人筋の間でレイラよりも評価が高く、最強と推されるのはルシア・ライカというオランダ出身の黒人選手です。
ルシアはもともとキックボクサーで、そのころも無敵の強さを誇り、K−1のリングで後の五輪テコンドー銅メダリスト岡本依子をボコボコにしたこともありました。あまりの強さから戦う相手がいなくなり、何と男子のタイ人とまで対決(これはさすがに彼女が負けてます)。
ついに(女子には)無敗のままボクシングに進出。ルシアを取り上げたドキュメンタリー映画『Shadow Boxers』を見ると彼女の別格の強さがわかります。米国のテレビ番組『Sport Science』では、彼女のパンチ力が、ある男子五輪ボクサーや男子総合格闘家より強いと証明されたことも。結局、彼女はボクシングでも負け知らずのまま引退します。
その後、選んだ道は女優。モデルばりのスタイルの美人で、現役時代から映画出演経験もありましたので、納得の転身でした。
彼女は『ローラーボール』(インドネシア出身の強気な選手役)、『Lの世界』(シーズン2はチョイ役だったのが、シーズン5では出番も増えて出世)、『スタートレック』(全然目立ってません)などに出てますが、おすすめはボクシング映画『ミリオンダラー・ベイビー』。
ルシアはヒラリー・スワンク演じる主人公の最大の敵である娼婦あがりのドイツ人王者役をつとめただけでなく、ボクシング指導も担当。
ヒラリーとはみっちり訓練を重ねたそうで、ルシアの迫力あるフックをヒラリーがかわしつつボディとフックを入れてダウンを奪うシーンなど、非常にあざやかなものになってます。ルシアのフットワークひとつとっても“本物感”が出まくっていて、映画のボクシングシーンとして出色の出来なのではないでしょうか。
ちなみに劇中では『キン肉マン』の残虐超人ばりの極悪ファイトを見せるルシアですが、格闘技雑誌のインタビューでは指導者への深い敬意を語るような超いい人なんですよ!
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