黒帯シネマ道場『ワイルド・スワン』
月刊誌『DVD&ブルーレイVISION』で、僕が連載していた格闘アクション映画を紹介するコラム「黒帯シネマ道場」。編集部のご厚意で原稿を転載させていただきます。
今回、掲載するのは、2014年3月号の記事。ロシアの元バレリーナが主演した『ワイルド・スワン』を取り上げました。
ワイルド・スワン
2013年/アメリカ・ロシア
監督:ロバート・クロムビー、ソフィア・スカヤ 出演:ソフィア・スカヤ、クリスチャン・スレーターロシアン・マフィアに夫を殺され、娘を誘拐されたバレリーナのマヤは罠にハメられて投獄される。娘を救うために、マヤは脱獄を決意し……。
空手をやってるわけでもないのに、空手家の十字を切る姿や「押忍!」というあいさつにあこがれる僕とあなたのための黒帯シネマ道場! 今月取り上げるのは、バレリーナがバレエの技術で敵と戦うクライムアクション『ワイルド・スワン』です。
原題は『ホワイト・スワン』(『アサシン・ラン』という別のタイトルもあるようです)。どうも『ブラック・スワン』にあやかろうとしているようで、そんなしたたかなところも嫌いになれませんが、格闘技オタク的にこの作品が気になるのは、主人公がバレリーナという点なんです。
極真空手の大山倍達総裁は生前にこういう言葉を残しています。
「アメリカに“バレリーナと喧嘩するな”ということわざがある」(『パワー空手』1985年12月号より)
本当にこういうことわざがあるかどうかは不明なんですが、ボディビルダー的な肉体よりもリズム感に優れた柔らかくバネが強いバレリーナ的な肉体のほうが戦いに向いているということを書いた大山総裁のコラムの中に、この一文は登場します。
この大山総裁のバレリーナ最強説を実証する作品が、『ワイルド・スワン』なのです!(製作者たちが大山総裁の言葉を知っていたのかどうか気になります)
主演・監督のソフィア・スカヤは1987年にロシアに生まれ、9歳でバレエを始めて17歳のときにプロのバレリーナとなり、2007年にハリウッドに渡って女優業に進出したというキャリアの持ち主。
『ワイルド・スワン』には彼女がバレエを踊るシーンもあるんですが、本作の肝はバレエを使った格闘です。
まず何と言っても体が柔らかいので、蹴り足のあがりかたがハンパない。何たってソフィアの必殺技は、正面に向かって蹴りあげた足が自分の背後にいる相手を直撃する大開脚キックなんですから。さらにはバレエ的なスピンの遠心力を使った回転ヒジ打ちや回転ハイキックも登場。柔軟性を活かして『マトリックス』のように上体を後ろに反らして相手のパンチを避ける芸当まで披露しています。
バレエ的な動きで敵と戦うシーンはやっぱりちょっと変で笑ってしまうところもあるんですが、そこでの身体能力にすさまじいものがあるのも事実。天国の大山総裁、バレリーナはやっぱり強いみたいです!!
- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
- 発売日: 2014/02/12
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